スクエニには以前から大幅な方向転換を行うという話があったところ、本日発表した決算が興味深かったため紹介しようと思います。引用元:スクエニIR情報
とりあえず収益のお話から。
スクエニ2024年3月期の決算
2024年3月期の売上は3563億円、利益は149億円という結果でした。前年より利益は下がっていますが色々な要因が絡むため特別悪い決算ではありません。
ではスクエニの主軸であるデジタルエンタテインメント事業の数値を見ていきます。2024年3月期のデジタルコンテンツ事業の営業利益(売上から開発費や広告費などを引いたもの)は254億円でした。この254億円はHDゲーム、スマートデバイス、MMOの合算になります。内訳をみていきます。
HDゲーム(コンシューマーソフト枠)では-81億円と赤字になっています。他の決算資料でも原因ははっきりとは書かれていませんが、FF7リバースの開発費と広告費が大きかったのではないでしょうか。
次にスマートデバイス部門です。
営業利益は142億円。セルランで好調なドラクエウォークが営業利益の大半を占めているのではないかと思われます。(個人的には一覧の半分くらいはサービス終了しても驚かないゲームです)
最後にMMO部門。営業利益193億円を上げています。売上は473億円であるため営業利益率40%というすさまじい優良部門となっています(普通10%で良い評価です)。ドラクエ10はほぼ国内向けであることからFF14が大きな割合を占めていそうです。
別の資料では「MMO事業拡大による収益基盤強化」が今後の目標に上げられており、新作MMOを出す予定があるのかもしれません。今から月額課金の新作ゲームはなかなか困難がありそうですが、どのようにしてMMO事業を拡大していくのでしょう。
というわけでデジタルコンテンツ部門の営業利益254億円は
コンシューマー:-81億円
スマホゲーム:+142億円
MMO:+193億円
が内訳となります。衰退したと言われているMMOがスクエニの柱になっているのは少し意外でした。
マルチプラットフォーム戦略への転換
個人的にここが一番の注目点です。資料には「任天堂プラットフォーム、プレイステーション、XBOXやPCを含む、マルチプラットフォーム展開を強力に推進」と書かれています。「より多くのお客様に遊んでいただける環境をグローバルで整備」とのこと。またスマホゲームでは「PCでのローンチも選択肢として検討」とあります。
「強力に推進」というかなり強い表現のためFF16やFF7リメイクなどのように機種を限定することは今後しない考えなのかもしれません。
カプコンも同じような方針?
過去の記事で取り上げたのですが2021年9月30日の東京ゲームショウでカプコンの辻本社長が以下のように述べていました。
※日本経済新聞の記事から冒頭を抜粋
カプコン社長、自社のソフト販売「PC向けメインに」(東京ゲームショウ)
2021年9月30日 19:13 [有料会員限定]
30日に開幕したゲーム見本市「東京ゲームショウ(TGS)2021」。主催の一般社団法人コンピュータエンターテイメント協会(CESA)の理事を務めるカプコンの辻本春弘社長は日本経済新聞の取材に対し、「来年もリアルで開催したい」と意欲を示した。自社のソフト展開については「パソコン(PC)向けをメインする」とし、2022年中にも販売に占める割合を5割に高める方針を示した。(中略)
実際にこの後発売されたサンブレイクはswitch版とパソコン版が同時に発売されました(ただしパソコン版は9時間くらい遅れて解放)。プラットフォームにこだわらない風潮がゲーム業界で強くなってきているのかもしれません。ユーザーにとっては良いことですね。
スクエニの出版事業
余談ですがスクエニの出版事業は非常に安定しており営業利益は119億円とゲーム事業に次ぐ利益を上げています。
2000年頃に出版事業に手を出し始めた記憶があり、スクエニに出版業ができるのか当時ちょっと疑問を持ったものですが非常にうまくいったようです。出版事業の担当者はなかなかの手腕なのかもしれません。
スクエニの長期ビジョン
スクエニは今回新たにスローガンを掲げました(ちょっとブラック企業感がある)。決算資料でのこういった文面は投資家へのリップサービスが多いのですが、ゲーム事業が上手くいっていない現状、わりと本気で取り組もうとしているように見えます。
おわりに
というわけで感想が多くなりがちですがスクエニのお話でした。なんだかんだ言われてもスクエニは大きい企業ですね。FF14のようにスクエニが再生することを願うばかりです。
それにしてもゲーム会社って色々特色があって面白いですね(‘ω’)
コメント